吾輩は猫であるが……
(ΦωΦ)
吾輩は、猫である。
名前は、源八と申す。主人は平賀源外というポンコツ発明家である。
吾輩は、貧乏長屋に住み着き、源外が餌をくれるので、源外の家で過ごす時間が自然と長くなり、源外の猫として渡世を渡っている。
「先生、これは何ですか?」
弟子の源之助が、ガラクタを手に取って源外に問うている。
「うむ、これはな、動物の声を訳す道具だ。」
たわけた事を源外がほざく。
吾輩の言葉が分かるなら、毎日あんな旨くない餌を吾輩に出す訳あるまい。
「さすが、先生です。世紀の大発明ではございませんか!」
吾輩が思うに、源之助は源外がポンコツと気付いているが、わざと遊んでいる節がある。
「そうだな、この大発明が世間に認められれば、こないだの月の兎捕獲作戦の失敗も穴埋めできよう。」
源外は、本当に幸せな頭を持っておる。
「それでは、源八の言葉を翻訳いたしましょう。」
源之助は、翻訳機を吾輩に向ける。
仕方ない、吾輩はニャ~と鳴いてやる。
翻訳機から、なんと人間語が出てくる。
「アホ〜」
「せ、先生、言葉が出て参りました。」
源之助が驚く。
「うむ、しかし精度は高くないな。カラスじゃあるまいし、猫はアホなど言うておらんだろう。」
吾輩は、驚いた。このアホ2人に吾輩の言葉が通じたのである。 せっかくなので、もう少し鳴こう。
「ニャ~、ニャニャン」
翻訳機から人間語が出てくる。
「源外、くだらない発明する前にちゃんと働け、源之助、あまり源外に付き合うな。」
凄いな。吾輩の言葉がちゃんと伝わる。
「ニャ~ニャ~、ニャニャ~」
「源之助、お前は面白がっているだけで、あまり源外を尊敬しとらんじゃろう。」
「………………」 貧乏長屋の一画に静寂な時間が流れる。
「す、すごい発明ですね。先生……」
「うむ、だが、やっぱり正確さに欠けとるようだな……」
「そうですね。こんな出鱈目を言うハズないですよね……」
いやいや、何を言っておる。吾輩の言葉を正確に訳しておるぞ、世紀の発明じゃ。
「うむ、残念ながら、失敗だな。廃棄するとしよう。」
えっ、それはもったいない。 「ニャ~ニャ~ン」
「アホ源外、それではいつまでも貧乏なままじゃ、旨い飯をたまには食わせんか! 甲斐性無しが!」
もはや、2人は翻訳機からの声に耳を傾けず、貴重なからくり機を壊してしもうた……
まだ、人間には猫の声に耳を傾ける器量が備わっておらんようだ。
こうして、源外は貧乏発明家のままであり、吾輩は大して旨くない餌を食べ続けるのであった……