砂埃 ③
しばらく走ると、砂漠の中に大型のバスがポツンと停まっているのが見えてくる。
俺達は、トラックから移民を降ろし、バスに乗り換えさせる。
このバスは、これから汚染された土地で働く者達を運んでいく。汚染地域の仕事は、国の仕事だが、この国の人間達はやりたがらない。だから、不法入国したような移民でも働ける訳だ。
俺は、アパートの親父にこの仕事を提案してやった。あまり良い労働条件ではないが、金は間違いなく出るし、柄の悪い連中や借金取りも汚染地域までは追ってこない。
そして、この仕事を斡旋すれば、俺とネイに金が入ってくる。
「ありがとうございました」夫婦は頭を下げてバスに乗り込んでいく。
「ガキを必ず迎えに行けよ」
俺は、夫婦に向かって言う。
バスの出発を見送り、ネイと車に乗り込む。
トラックは来た道と同じ道を走り、街に入ってネイを送り届けて、家につく。
俺は家の明かりを付け、ソファに座り込む。疲れた……
すると、ガレージの方から音がする。
誰か居るのか、俺は連中から取り上げた拳銃を持ち、ガレージに続くドアを開ける。
「誰か居るのか!」
ガレージの隅に毛布にくるまっていた少年が驚いた顔でこちらを見ている。
あの夫婦のガキだ。
「どうして、お前がここに居るんだ」
ガキは、「ここの人にお世話になりなさいと言われた」と言った。
なんてこった、アイツら俺にガキを押し付けて行きやがった……
「そうか、寝ろ!」とガキに言って、俺はガレージから出ていき、ベットに倒れ込む。
移民達を乗せたバスは、今頃砂埃をあげて北に向かっているのだろう…
翌日、ガレージでトラックを整備していると、ネイがやって来て、ガレージの隅で漫画を読んでいるガキを見る。
「これは、どういう事だ?」
「知らん」
ネイは、笑いながら「本当に物好きだな」と言った。