ウーの鳥 ①
「トゥラン、変な鳥が居るよ」
ガレージで作業中にウズィが叫んだ。俺がウズィの指差す方を見ると、派手な鳥が電柱にとまっている。
「ありゃあ、オウムだな。どっかから逃げ出してきたんだな」
「何か、変な鳴き方しているよ」ウズィは、オウムに釘付けだ。
「オウムってのは、言葉を覚えるんだ。知らないのか?」
「本物を見たのは、初めてなんだよ」ウズィが少し不機嫌になる。
最近、ガレージでウズィに車の整備を教えたりする時間が多い。
「よう、元気か?」ネイが、いつものようにふらっと現れる。
「何かあったか?」最近、ネイは仕事を持って来ない。 適当な男だが、顔が広いネイが持ってくる仕事は少なくない。
「実はオウムを探しているんだ。ウーが珍しく大金を出すって言ってるらしい」 ネイは、適当なイスに腰かけながら言う。
ウーは、表向きはそこそこ大きな料理屋を営む店長だが、裏では悪どい商売をしてきた男だ。頬に大きな傷があり、この傷が箔をつけている。
「ウーがオウムを?」とても動物を可愛がる男には見えない。
「オウムが家から逃げ出したから、捕まえて欲しいらしい。大金を出すそうだ」金の話になるとネイは嬉しそうに喋る。
「あのドケチのウーが珍しいな」俺はにわかに信じられない。
「巷では、ウーがオウムに金庫の番号を覚えさせているのじゃないかと噂してるけどな…」ネイはスマホでオウムの写真を映す。
「このオウムらしい」
俺は、写真を見て、言う。「このオウムなら知ってるぞ」
ネイが、身を乗り出す。「え、どこに居るんだ?」
「あそこ」と言って、ウズィが電柱にとまっているオウムを指差す。
オウムは、呑気に電柱の上で何やら喋っている。
「何を喋ってるんだ?」ネイが電柱の上のオウムを見上げて聞いてくる。
「知らん、どうやって捕まえる?」俺が聞くと、ネイはオウムを見ながら「実は、殺して連れて来ても良いらしい……」と言った。
「トゥラン、撃ち落としてくれよ」ネイが俺の顔色を伺いながら頼んでくる。
「何だそれは? 訳が分からんな。可愛がってる訳じゃないのか」俺は眉間にシワを寄せる。「オウムでも殺したくない」
「じゃあ、どうするんだよ」とネイが聞いてくるので、「自分で考えろ」と突っぱねる。
オウムは電柱の上で呑気に喋り続けていた。