ウーの鳥 ②
「ウズィ、鍋持って来い!」 ネイは、ガレージでパソコンをいじっていたウズィに命令する。
ウズィは、素直に台所から持ってきた鍋をネイに渡す。ちょうどオウムが入りそうなサイズの鍋だ。
「見てろよ」 ネイは、そう言って、鍋を片手に持ちながら器用に電柱によじ登り始める。
オウムが呑気に鳴いている下で、ネイが必死によじ登っていく。俺とウズィはガレージのイスに腰かけながら、のんびり見学していた。
手を伸ばせばオウムに届きそうな所までネイがよじ登り、「くらえ!」と言って、鍋をオウムに被せにいく。
鍋がオウムに触りそうな瞬間に、オウムは飛び立ち、ネイの頭を爪でひっかく。
バランスをくずしたネイは、電柱から転落して地面に叩きつけられた。
「あいててて…」
オウムは元にいた場所にとまり、地面に落ちたネイを見下ろし、「アホ〜」と鳴いた。
「カラスじゃあるまいし…」俺とウズィは、この出来事を大笑いしながら見ていた。
「笑ってるなら、お前らがやってみろ!」 ネイが怒って怒鳴る。
ウズィが俺に耳打ちしてきた。 俺は、分かったと言い、準備を始める。
ウズィが鍋いっぱいにヒマワリの種を入れる。俺のつまみ用だ……
その鍋を床に置き、それから、俺達は、ガレージの隅に姿を隠す。
人が見えなくなって警戒が解けたのか、しばらくすると、オウムがヒマワリの種を食べに鍋のところまで降りてきた。
オウムは腹が減っていたらしく、ヒマワリをがっついて食べ続ける。
「トゥラン、今だ!」とウズィが叫ぶ。
俺は、ゴミ捨て場でゴミに被せるネットを投網のように投げる。
端に乾電池をくくりつけた即席の投網だが、上手く投げられた。
ネットは、見事にオウムを中心に広がり、包みこむ。
ネットの中に捉えられたオウムは、バタバタしながら、「このアホ! このアホ!」と鳴いている。
このオウムの声は女性の声のようだが、どっかで聞いたような……
ネットにオウムを包んで、持ち上げる。
「じゃあ、ウーのところに行って、金を貰おう」俺がこう言うと、ネイが提案してきた。
「ちょっと、待ってくれ! このオウムが本当に金庫の番号喋るかもしれないし、もう少し鳴き声を聞いてみようぜ」
オウムは、ネイが借りてきた鳥かごにおさまっている。
ウズィは、興味深そうに、ずっとカゴから離れずにオウムを見ている。
「全然、鳴かなくなったぞ…」ネイがカゴをカンカン叩きながら言う。
「環境が変わって、落ち着かないんだろ」俺が答える。
「ちょっと、様子を見るか」ネイはそう言ってソファに座って、スマホをいじりはじめた。