ポンコツ親父のガラクタ日記

ポンコツ親父の下らないガラクタ日記です。ポンコツ雑記とガラクタ小説をあげています。お時間のある方は読んでやってください。m(_ _)m

レッドタートル

「無理ゲーだよ、ちくしょう!」 俺は、何かを地面に叩きつけたい気分になった。

それにしても、気持ちが良いくらいの点差だ… サッカーって、こんなに点差がつくのか?というくらいの点差だ。もしかしたら、大会記録かもしれない。

レッドタートル。これが俺達のチーム名だ。ちなみに相手チームはホワイトラビッツ。 まさにウサギと亀を地でいく試合展開だ。ただ、もはやウサギがどんなに居眠りしようと勝敗はひっくり返らない……

俺は、ちらっと勝田を見る。 こんな試合になっちゃったけど、満足なのだろうか。

勝田は、我が校のサッカー部キャプテンだ。世間ではメジャーなスポーツで、競技人口も多いサッカーだが、何故か我が校では人気が無かった。

いつも定員割れのサッカー部は、どんなに頑張っても11人に届かず、大会に出れない日々が続いていた。

勝田はそんなサッカー部のキャプテンで、サッカー練習より勧誘活動に重点を置いて、部活に励んでいたが、高校生活最後の大会も参加できずに終わってしまった。

これ以上なく不完全燃焼に終わった勝田は、他の部活を引退した同級生に声をかけて、せめて草サッカー試合に出ようとした。

そして、それが実現したのが今日の試合だ。

遊びの草サッカーの大会だが、何故か初戦の相手は強豪校の高校サッカー部を引退した奴等が遊びで出たチームだった。

その実力差は絶望的だった。素人同然の俺達が軽くあしらわれるのは分かるが、元サッカー部の勝田までがまるで歯がたたなかった。

相手のシュートがまたゴールネットを揺らす。もう何回目だろう、俺はこのフィールドから消えてなくなりたい気持ちになっていた。

俺でさえこんな気持ちだ、勝田はどう思っているのだろう。

試合終了のホイッスルが鳴る。

やっと、地獄の時間から開放された。 お互いに整列して挨拶をし、フィールドから立ち去る。

俺は、勝田をちらりと見る。

勝田は靴を履き替えるため、地面に座り込んでいるが、表情が見えない。

「がっかりしているか?」俺は勝田に聞いた。

「まぁ、こうなるって分かっていたからな」勝田は靴を履き終わり、立ち上がる。「でも、久しぶりに試合でれて嬉しかったよ。ありがとう」

意外にも、あっさりとした表情だった。そして、俺の腹が鳴る。部活を引退してから久しぶりの運動だ、腹も減る。

「なんか食って帰ろうぜ!」