ポンコツ親父のガラクタ日記

ポンコツ親父の下らないガラクタ日記です。ポンコツ雑記とガラクタ小説をあげています。お時間のある方は読んでやってください。m(_ _)m

鉱石

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我々は、実に非力だ。

我々の見た目は、ネズミという生き物そっくりで、実際の運動能力もネズミくらいなものだ。

だが、先祖が宇宙から船に乗って来ただけあり、我々の文明はだいぶ衰えてしまったが、まだ頭脳は人間にも劣らない。

我々は平和を好むので、屋根裏や軒下にひっそりと暮らしている。

俺も、愛する妻と子供2人と一緒に文京区にある有名な大学の倉庫の天井裏に我が家を構えている。

我が家は、非常に住みやすい。大学の敷地が広く、自然もたっぷり残っているので、敷地の片隅で家庭菜園などを楽しめる。

夜になれば、人間達が居なくなるので、仲間達と食事会を催す。

皆も、上手に住み家を見つけて、暮らしを楽しんでいるようだ。

我々が非力ながらも、楽しんで暮らせるのは先祖が遺した遺産のおかげだ。

半永久的にエネルギーを発する鉱石。

これは、我々の先祖が宇宙船の燃料として使っていたものだが、宇宙船なき今は、少しづつ砕いて皆が1人ひと欠片を肌身離さず持っている。

この鉱石は、先祖の発明した最高の代物と言える。明かりを発したり、物を焼いたり、傷を癒やしたり、扱いに慣れれば思いのままのことができる魔法の石だ。

鉱石は、宇宙船の残骸と一緒に人間に見つからないように地下に隠してある。

子供が生まれれば、その子供に与える鉱石の欠片を取りに行く。

宇宙船の残骸は、我々一族の聖地であり、1番の都市となっている。

そこは、この国の王様が代々住んでいる皇居という敷地にある。

一般の人間が入って来ず、開発されることもない最高の隠し場所だ。

大きな木の根本に穴が空いており、地下深くに潜っていくと、急に昼のように明るくなる。

そこには大空間があり、宇宙船の残骸の周りに門前町のように町ができている。

この町の人々は、宇宙船と鉱石を守るだけじゃなく、我々一族が困っている時に救いの手を差し伸べてくれる。

このように、東京という町には人間の世界と我々の世界が存在しており、我々の世界は誰にも気付かれずに平和に発展している。

人間が、我々を見かけたとしても、小さな石を持っているネズミにしか見えない。

でも、その石が我々一族の証だ。