宇宙からの使者
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自分の先祖がどこから来たか、そんなことは分からない。
ただ、宇宙から来たことは確かだ。
小さい頃に親父に聞いた話によると、俺の先祖は故郷の惑星が隕石の衝突にあったため、宇宙船で集団疎開したそうだ。
我が一族は温厚な性質のため、競争相手の居ない平和な星を探して、何百年も宇宙を漂っていた。
宇宙船の中で自給自足しながら、一族は何世代も漂流してきた。
地球という星を見つけ、我々は、江戸という町を調査していた。
人間という野蛮な生物が居るため、我々が住むには適さないのではないか。しかし、資源が豊富だし、何年か滞在しても良いのではないか。
などと言う議論を、町の外れの河原の上空で交わしていたらしい。
その時、ゴオオオオという爆音が聞こえた瞬間、我々の宇宙船は、謎のロケットに打ち落とされてしまったらしい……
まだ、ロケットなど作れる文明などないハズなので、先祖達は完全に油断していた。
こうして、地球に打ち落とされた我々の祖先は、人間から身を隠して暮らすうちに、文明を衰退させ、地球から脱出できなくなってしまった。
我々の見た目は、地球のネズミという生物に似ており、大きさもネズミと同じため、人間に見つかってもネズミのふりをすれば文明を持った宇宙人だとバレなかった。
こうして、我が一族は東京という町の片隅で、人間に見つからないようにひっそりと生きてきたのだ。
家の屋根裏や、軒下におもちゃの様な家具が置いてあったら、それは子供のおもちゃではなく、我々の住み家なので、荒らさないでもらいたい。
我々は、静かで平和な生活が大好きなのだ。