MUSCLE Ⅵ
💪 💪
負けたくない、戻りたくない一心で僕は頑なに生活を維持した。
勉強とトレーニングで体はボロボロになり、睡眠時間を削ったせいで頭はぼーっとしていた。
せっかく出来た彼女も、余裕のない僕から去ってしまった。
僕の築いた自尊心は、戻りたくないという強迫観念に変わっていた。
学年トップの地位を譲りたくないし、筋肉を落として、不良達になめられるのも嫌だ。
もはや、止められない暴走列車に乗っているようなものだった。
そして、列車は脱線事故を起こす。
受験日目前で、僕はついに過労で倒れてしまった。
病院のベッドで天井を見つめていると、誰かが病室に入ってきた。サイトウさんだった……
「元気そうだな」
「こんなに頑張ったのに、結局、受験できませんでしたよ」自嘲気味に笑って応えた。
サイトウさんと1時間程、世間話をした。その時間は久しぶりの落ち着ける平和な時間だった。
「お前は、頑張り過ぎだ。トレーニングには休養が必要だと言っただろう」
やっと、暴走列車から降りた僕は、素直に頷く。
「またジムで待っているぞ」サイトウさんはそう言って帰って行った。
その夜、病室でテレビを見ていたら、あの筋肉男がやっているトレーニング番組が始まった。
久しぶりに見たムキムキ男は、相変わらず楽しそうにトレーニングをしている。
ムキムキ男は本当に楽しそうだ。
これからは、僕も楽しんでトレーニングしていこう。
心からそう思う……