砂埃 ②
隣のアパートの親父は仕事を断れないだろう。断ったところで借金取りに加えて、質の悪い連中からも目に付けられるだけだ。
どんな罪の身代わりか分からないが、長年家族と会えなくなるのは間違いない。それでも、金が払われれば良い方だか……
俺は、今夜仕事で使う車の整備を終わらせ、工具を片付けていた。
さっきから、ガレージの前に同じ車がずっと停まっている。中には男が2人。
俺が車のドアをコンコンと叩くと、窓が下がる。
「何か用か?こんな所に停められたら、邪魔なんだが……」
「うるせぇ、ジジイ」と頭の悪そうな男が手を払いのける仕草をする。
俺がガレージに戻ると隣のアパートの親父が戻ってきた。俺は手招きして親父を呼び寄せる……
夜は暮れ、時間的には深夜になっている。俺はガレージのシャッターを空けて車を出す。
俺の自慢の車は、ボロいトラックだ。もう20年はコイツのお世話になっている。助手席にはネイが乗っている。
俺達は車を走らせる。街の一角に5人の男女が立っている。いずれも人種はまちまちだが、移民達だ。
車を停め、ネイが車から降りて移民達に言う。「待たせたな。乗れ」
移民達は、トラックの荷台に乗り込み始める。
移民達の中には、あのアパートで喧嘩していた夫婦が居た。
俺が「良いのか…」と聞くと、夫婦はお願いしますと頭を下げた。
「ガキはどうしたんだ」
「信頼できる友人に預けました」
「そうか、乗れ」
車を出すと、ネイが俺を見て「本当に物好きだな」と言う。
俺はアクセルを踏む。
俺達は、街を抜け出して砂漠を走る。
真っ暗な砂漠を走り抜けていく。すると、「つけられてるぞ」とネイが言う。
後からライトを消した車が追いかけてきていた。 ガレージ前に停まっていたあの車だ。
俺はトラックを停める。
「おい、そいつをどこに連れて行くんだ」車から男が2人降りてきて怒鳴る。手には拳銃を持っている。
やれやれだ……、見張られているから、裏からこっそり出て来いと夫婦に言ったのに。
俺はライフルを取り出し、ネイは車から降りる。
「テメェは、何なんだ!」男が怒鳴る。
俺はライフルを撃った。男達の肩を撃ち抜く。男達は拳銃を落とす。
その間に駆け寄ったネイが男2人の顔面に拳をめり込む。
ネイは、落ちている拳銃を拾い上げて助手席に乗り込む。
「これは、高く売れるぞ」嬉しそうにネイは拳銃をいじくる。
トラックは砂埃をあげて、再び走りだす。