ウーの鳥 ③
夜も更けて、ネイは何故か俺達と夕食を食べている。
「全然鳴かねえな…」 鳥かごの中のオウムは、黙ったままだ……
ネイはテレビを、ウズィはパソコンを、俺は雑誌を読んで夕食後を過ごしていたが、いきなり女の声で「ウー!」と言う叫びが聞こえる。
叫び声の主は、あのオウムだ。
「ウーチャン!」
俺は、やはりこの声を聞いた覚えがある。そう、この声は……
俺とネイは、ウーの料理店の前に立っていた。ネイの手にはオウムの入った鳥かごがある。
ウーの店の従業員に、ウーに会いに来たと言うと、奥の部屋に通される。
「トゥランか、これは珍しい客だな…」 ウーが俺の顔を見て言う。
ウーと俺は、同じ頃にこの街に流れてきた移民だ。お互いろくな人生を歩んでこなかったが、同じ街だ。たまに顔を合わせる仲ではある。
「ほら、お前さんのオウムだ」ネイが鳥かごをドンと机に置く。
「フン、生きて戻ったか」ウーは、少しも嬉しそうじゃない。
「とにかく、約束の金をくれよ」とネイが言う。
「チッ」と舌打ちして、ウーが従業員に言って金を持って来させる。
ネイは、ニヤニヤしながら金を受け取る。
「それは、お前さんの亡くなった嫁さんのオウムだろ?」俺は、金を数えるネイを横目に見ながらウーに聞く。
「お前には関係ない」ウーは無愛想に返事する。
「そりゃ、そうだ。だが、オウムの声や喋り方は、お前さんの嫁さんそっくりだよ」
ウーは気まずそうに、「オウムが何か喋ってたのか…」と言った。
ネイと俺は顔を見合わせる。思わずニヤニヤしてしまう。
「何がおかしいんだ……」ウーが気まずそうに聞いてくる。
「いやいや、可愛らしい奥さんだなと思ってな…」俺が答えると、「早く帰れ!」とウーが怒鳴る。
「さぁ、ネイ帰るぞ」と俺はネイと一緒に部屋を出る。
ウーのいる部屋から、オウムの声が聞こえてくる。久しぶりの我が家に安心したのか、饒舌だ。
「カワイイ ウー チャン アイシテルワ」
あの強面のウーが随分と奥さんには甘えてたのか、それとも、亡き妻の嫌がらせか。オウムは奥さんの声で鳴き続ける。
「ナカナイデ ウーチャン ダイジョウブヨ」
俺とネイは、笑いながら店をでた。