ポンコツ親父のガラクタ日記

ポンコツ親父の下らないガラクタ日記です。ポンコツ雑記とガラクタ小説をあげています。お時間のある方は読んでやってください。m(_ _)m

遊び心

f:id:garakuta32:20211212091250j:plain

      ♨    ♨    ♨

最近の若いヤツは、遊び心が足りん。

どんな窮地に陥ろうと、人生を楽しむくらいじゃないとな。

「災い転じて福となす」と言うだろ。あれは、遊び心がなせる業じゃ。

こないだ、盗みに入った時も、まさか後から同業者が来るとは思わなかったが、ユニークな方法で切り抜けた。

70歳を間近にして、頭は冴える一方じゃ。

お気に入りの定食屋が混み合っていたため、相席になったタクシーの運ちゃんに人生とは何たるかを講釈してやった。

飯も食ったし帰りの段になって、つい足を滑らせて転んでしまった。

タクシーの運ちゃんが、ご丁寧に起こしてくれたよ。

不景気な顔をしているが、なかなか良いヤツだ。

お礼を言って、定食屋を出てから、財布を取り出す。

あの運ちゃんの財布だ。起こしてもらった時につい盗っちまった。

中身を見ると、ショボい金額しかねぇ。

     ♨     ♨     ♨

「……という訳なんだ。親切にしてくれた人から泣けなしの財布を盗るのは、ちょっと良心がな……」

向かいの男は、無表情で聞いている。相変わらず愛想のない男だ。

「それで、どうして欲しいんです」

「俺の代わりに財布を返してくれ」

「嫌です。自分で返せば良いじゃないですか」即答だ、なんて冷たい男だ。

「俺が返したら、俺が盗ったって、バレバレじゃねえか」

「定食屋に落ちてたって、渡すとか、警察に届けるとかあるでしょう」

「前科者の俺が警察なんて行けるか。それに、ヤツは最近、定食屋に来ないで、公園で弁当食ってるんだ」

「あなたが、財布を盗んだから弁当食べてるんですよ」

つまらない男だ。昔の上司である俺の言うことも聞く気がないとは……

仕方ないので、俺は財布にあった免許証の住所の家に忍びこむことにした。

真夜中に真っ黒の格好で忍びこむ。ダイニングに行き、テーブルに財布を置くと、包まれた弁当が2つ目に入る。

包みを開ける。渋い色の弁当箱は、あの男のものだろう。中身を見ると弁当箱の色と同じように渋い。

肉や魚が入っていない。煮物とヒジキだけだ。

もう一方の弁当箱を開けると、なかなか豪勢だ。肉だらけじゃないか。

俺は、唐揚げを頬張ると、弁当箱と包みを入れ替えてやった。

あの男にも、少しは良い物を食わしてやろう。

     ♨    ♨     ♨

しばらく振りに定食屋に行くと、あのタクシーの運ちゃんがいた。

弁当はやめたみたいだな。あんな弁当じゃ栄養が足らんだろう。良かった。

俺が定食屋を出ようとすると、時代遅れのサングラスをかけたチンピラが入ってきた。

案の定、道を譲らないため、俺と肩がぶつかる。

「いてぇな、ジジイ!」

この手の輩は、いつも言うことが一緒だ。

俺は定食屋を出て、チンピラの財布を取り出す。なかなかのボリュームだ。やっぱり、こういう輩から盗るのが1番じゃ……

👇関連する話

garakutablog.hateblo.jp

garakutablog.hateblo.jp