変異 イチ
息子は、変わっている。
我が一族が地球で暮らすようになって150年以上が経った。
地球の環境に適応するように変異したのかもしれない。種の進化だ。
何が変わっているかと言うと、我が一族は一匹にひとつ鉱石を持っている。
この鉱石は、我が一族が宇宙からやって来た時にエネルギーとしていたもので、現在は我が一族で分け与えられている。
息子の持っている鉱石の色が普通ではないのだ。
普通は灰色でそこら辺の石ころと変わらない色をしている。
しかし、息子の鉱石は赤味がかかっており、まるで宝石のようだ。もちろん、最初は皆と同じ色の鉱石だったのだが、いつの間にか今の色に変化していった。
息子は、とても好奇心が旺盛で、人間の言葉を操ることが出来る。
人間の言うことが理解は出来るが、喋ることが出来るのは息子が初めてだ。
また、息子の鉱石は他の鉱石よりも力が強いように感じる。何をやらしても大人顔負けの威力があるのだ。
妻は息子のことを誇らしく思い喜んでいるが、私は何か不吉なことが起こらないか、心配でならない。
「お父さん、競馬って知ってる?」
「何だ、それは?」
「お馬さんのレースだよ。お金というものを人間が賭けるらしいよ」
「そうか、それがどうしたんだ」
「実はね……」
息子は最近、日中出かけて人間の子供と遊んでいるらしい。その子供がお金というものに困っているらしい。
息子は、競馬でお金を賭けることを提案したらしい。
「それで、お父さん相談なんだけど……」
次の日、私は競馬場に居た。息子が勝たせたい馬がいるので手伝ってくれと言うのだ。
私は、その子供ともう会わないことを条件に手伝ってあげることにした。
これ以上、人間に会うのは危険だ。巷では喋るネズミの噂が立ち始めてるらしい……
レースが始まる。息子が勝たせたい馬は3番手のようだ。私は、先頭の馬の前に立ち、鉱石からパワーを飛ばす。
驚いた馬は跳ね上がり、後ろの馬を巻き込んで落馬した。
息子が応援していた馬は見事1番でゴールした。
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