ポンコツ親父のガラクタ日記

ポンコツ親父の下らないガラクタ日記です。ポンコツ雑記とガラクタ小説をあげています。お時間のある方は読んでやってください。m(_ _)m

巳 ②

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一体、どこから大蛇が入ったのか、そもそも何故、街中に大蛇がいるのか…

 

大蛇との睨み合いに時間ばかりが過ぎていく。

 

「とりあえず、この部屋から出るぞ」と大蛇を見たまま俺が言う。

 

ウズィとネイが大蛇を刺激しないように静かに動き、扉からゆっくりと出ていく。

 

「タトゥどうしたんだ?」といつまでも動かないタトゥに俺が聞く。

 

「ヘビが苦手で、腰が抜けちゃった…」と情けない声で返す。

 

俺は仕方ないので、タトゥに肩を貸して扉にゆっくり移動する。幸い、大蛇は俺達を見ているが、襲ってくる気配はない。

 

無事に部屋から出て、扉を閉めると、肩から力が抜ける。

 

「ありがとう、トゥラン」と言って、タトゥが壁を伝ってイスまで移動する。

 

「何だ、意外とだらしないな!」とネイが余計なことを言うので、タトゥがネイを睨む。

 

「しかし、あんなヘビが家に居るんじゃ、どうにかしないとな」実際、困ったものだ。俺はどうするか考えながら言った。

 

しばらく、扉の向こうを警戒しながら、みんなで考えてみたが名案が浮かぶ訳もない。

 

タトゥが沈黙を破る。

「あんた、偉そうなこと言ってたんだから、何とかしてみなさいよ」

 

いきなり言われて、ネイが狼狽える。 「なんで、俺なんだよ!」

 

タトゥは嘲笑しながら、「何、恐いの?」と挑発する。

 

それを聞いたネイは頭に血が昇り、近くにあった鉄パイプを掴むと勢いよく扉に向かう。

そして、「見てろよ、お前ら!」と言い、扉を開けて部屋に入って行ってしまった。

 

これを見ていたウズィは、驚きながら呟いた。

「本当に単純なんだね…」

俺の意見も全く同感だ。

 

部屋の中から、ネイの威勢のいい声が聞こえたが、しばらくすると悲鳴に変わる。

 

「トゥラン、助けてくれ!」

 

俺が工具の中からノコギリを持ち、部屋に向かおうとすると、大蛇が部屋から顔を出す。

 

大蛇は、ネイを体に巻き付けたまま、部屋からのっそりと出てきた。

 

「良かった、生きているみたいだな」と俺が声を掛けると、「良くない!」とネイが叫ぶ。

 

いきなり、大蛇とネイに液体がぶっかけられた。

 

タトゥが、ガレージにあった携行缶のガソリンをぶっかけたのだ。

 

「このまま燃やしてやるわ!」とタトゥが叫ぶ。

 

「ちょっと、待て! 俺も燃えるだろ!」とネイも叫ぶ。

 

「ウズィ、タトゥを止めろ!」と俺が言うと。ウズィがライターを持ったタトゥにしがみつく。

 

タトゥは興奮しているし、ネイは「勘弁してくれよ!」と騒ぎたてる。

 

仕方ない、俺がノコギリで大蛇に斬りかかろうとした時、「ミーちゃん!」という女の声が表から響く。

 

何事かと振り向くと、リムジンの後部座席から派手な老女がこちらを見ている。

 

その老女がリムジンから降りて、両手を広げて叫ぶ。

「ミーちゃん! こんな所にいたのね!」

 

大蛇は老女に気付くと、ネイを解放して老女に向かって行った。

 

老女は、大蛇に抱きつくと、「心配したのよ〜! さぁ、帰りましょう」と言い、リムジンのドアを開ける。

 

大蛇は、リムジンの車内に入り、ぎゅうぎゅうになりながらも収まった。

 

老女は助手席に乗り込み、「さぁ、お家に帰るわよ」と言い、リムジンは発車する。

 

突然の出来事を見ていた俺達は、呆然としてリムジンが去って行くのを見守っていた……

 

ネイが地べたに座り込んだまま呟く。

 

「ヘビーな出来事だな……」

 

タトゥは、馬鹿にした眼つきでネイを見ていた。