タトゥ ③
「テメェが、ネイだな! 殺してやる」3人の柄の悪い男が表に立っている。
「アイツらから奪ったんだ。取引の情報が入ったから、現場でかっさらった。」ネイが頭をポリポリ掻きながら言った。
やれやれだ… 結局、災難を持ち込んでいるのはネイじゃないか。
柄の悪い男達は、ナイフを取り出して、「テメェ、とりあえず薬をよこせ!」と怒鳴る。
ネイが「参ったな…」と言った瞬間、ネイの手から小瓶が取り上げられる。
タトゥだ。いつの間にかネイの後に立っていて、ネイの手から小瓶を取ったのだ。
タトゥは、小瓶を地面に投げ捨てる。小瓶はパリン音を出して割れた…
その場にいた全員が固まる。
最初に言葉を発したのは柄の悪い男の1人だった。
「テメェ〜!」と言いながら、タトゥに襲いかかる。
だが、次の瞬間、柄の悪い男の顔にタトゥの肘がのめり込み、倒れ込んだ。
「すげぇ〜、一発KOじゃん…」ネイが呑気に感心する。
残り2人の男達も激昂して、襲いかかってくるが、1人をネイが殴り倒し、1人を俺が工具で叩きのめす。
タトゥに倒された男が起きあがり、拳銃を取り出して「テメェら、殺してやる!」と天井に発砲した。
俺が工具をそいつの顔面めがけて投げつけ、命中したところに、タトゥが追い打ちの肘をみぞおちに食らわせた。
俺達は、ガムテープでグルグル巻きにした男達をトラックに積み込み砂漠に置いてくる。そのうち誰か通りかかって通報するだろう。
帰りのトラック、助手席にはタトゥが座り、ネイとウズィは荷台だ。
「お前さん、何者なんだ」俺は前を見ながらタトゥに聞く。
「私はね、化学者なの。ついでにナゴの街のギャングを爆破したのも私…」タトゥは嬉しそうに言う。
「兵器を開発することに疲れたのよ。そして、私の作った兵器が世界で人の命を奪うのが耐えられなくなった」
「それで、武器商人のギャングを爆破したのか…」とんでもない奴を拾ってしまったなと俺は少し後悔する。
「まぁね、私は軍の研究所にいたんだけど、上層部があいつ等に兵器を横流ししていたの。貧しい国だから、資金作りの一環ね」
タトゥの話はこうだ、彼女は兵器開発が嫌になり、祖国から逃げ出した。そして、この国で自分の開発した兵器を売ろうとしていたギャングを爆破した。
ギャングから逃げ回り、ゴミ置き場で行き倒れたらしい…
「これから、どうするんだ?」タトゥを横目に見て聞く。
タトゥは力強く「夢を叶えるのよ!」と言う。
「夢?」
タトゥは、俺の方を向いて嬉しそうに「そう、私は幸せなお嫁さんになるの!」と宣言する。
「軍隊で研究してたせいで、こんな歳になっちゃったけど、今から幸せなお嫁さんになる!」と言った。
俺は、笑いを噛み殺す。 きっとネイが聞いていたら、大笑いするのだろう。
砂漠で砂埃を巻き上げて、トラックは走っていく。