巳 ①
昼下り、ガレージの机に昼飯のために皆が集まる。
俺とウズィ、タトゥで机を囲み、油臭いガレージに美味そうな臭いが漂ってくる。
昼飯を作るのはウズィの役割で、今日はパスタだが、なかなか美味い。
「本当にウズィは料理が上手ね」とタトゥが褒めると、ウズィは恥ずかしそうに笑った。
「おぉ、美味そうだな!」と言って、ネイが現れる。
最近、飯時になるとネイは仕事も無いのに、ここに来るようになった。
「あんたは、本当に図々しいわね」とタトゥがネイに嫌味を言うと、ネイも言い返す。
「どうせ、お前が作った訳じゃないだろ!」
バンっと机を叩いて、タトゥが奥へ行ってしまった。
ウズィは、タトゥが消えて行った奥の部屋を見て、「あ〜あ」と嘆いた。
ネイはイスに座り、タトゥが残したパスタを食べ始めた。
「美味いな、さすがだな。ウズィ」
ウズィは少しも嬉しくなさそうにネイを見て、あ〜ぁと溜息をついた。
ネイは、口いっぱいにパスタを詰め込んで、奥の部屋を見る。
「しかし、あの女も居着いちまったな。どうするんだよ、トゥラン」
「お前も似たような物だろう」と返す。
「ほうか? ほんな事ないぞ」と口の中にパスタを入れすぎて何を言っているか分からない。
「タトゥと仲良くしなよ」とウズィがネイに言うと、ネイが「無理!」と大人げなく返す。
「やれやれ…」と今度は俺が溜息をつく。
「あの女が、仲良くしたいって言うなら考えてやっても良いぜ」と阿呆なことをネイがほざく。
もはや、この2人に仲良くしろと言うのがバカバカしい…
「タトゥを見てくるよ」とウズィが奥の部屋に駆けていく。
しばらくすると、奥の部屋からウズィの叫びが聞こえる。
「トゥラン〜!」
切迫した声に、俺とネイは顔を見合わせ、すぐに奥の部屋に駆ける。
部屋に入ると、部屋の片隅にウズィとタトゥが抱き合って座り込んで小さくなっている。
ウズィが、無言で指を差す。その先には、非常に大きな生物が居る。
「なんだ、あれは…」とネイが聞くので、答えてやる。
「あれは、ヘビだ。知らないのか」
「ヘビくらい知ってるわ! あんな大きなヘビがなんで居るのか聞いてるんだよ!」 ネイが興奮気味に言い返す。
確かに、見た事がないくらい大きなヘビが何故か我が家にいる。
大蛇は、舌をチロチロ出して、我々を見つめていた。