ベーコンエッグ
フライパンにバターを落とす。バターが溶けて、良い匂いがしてくる。
ベーコンをフライパンに落とし、こんがりと焼けてきたら、卵を割り、フライパンに投入する。
ベーコンエッグだ。
これを焼いたトーストにのせてテーブルに出してやる。
「ほら、朝飯だ」 寝ぼけてボーッとしているウズィに言う。
「結局、アンタが面倒見ているのか」先に食べているネイが口をくちゃくちゃさせながら言ってくる。
「別に、お前が朝飯を食いに来なくても良いんだぞ」
俺も自分のお人好しさに呆れながら言う。
ウズィは、俺が仕事を紹介した移民の夫婦だが、奴等はガキを俺に押し付けていきやがった。
警察に届け出ようとも思ったが、不法入国の場合、ウズィ、一人が強制送還されかねないので止めておいた。
ウズィがモグモグとベーコンエッグを食べているのを見ながら言った。
「これからは、お前が朝飯を作るんだ」
ウズィがキョトンとしながらモグモグしているのを見て続ける。
「家事を少しづつ分担していく、俺は仕事があるんだ。お前にも出来る限り家事をしてもらう」
聞けば、ウズィは12歳だという。家事くらいは出来るだろう。
「おいおい、トゥラン、こんなガキには無理なんじゃないか」 ネイが、相変わらず口をクチャクチャさせながら口を挟む。
「お前は黙ってろ」と俺が言うと、「いいよ」とウズィが言った。
「前から家事はやっていたから、全然平気だし、ここに置いてもらえるならやるよ」 ウズィも相変わらず口をモグモグさせている。
「決まりだな。だけど学校には行けよ」と言って、俺はベーコンエッグを食べる。 自画自賛だが、俺のベーコンエッグは旨い。
「いや、学校には行かない。僕はここで仕事を手伝う」とウズィが言う。
「なんで学校に行かないんだ。学校には行かないと駄目だ!」
俺が言うと、ウズィはパソコンを取り出し、「これで十分だよ」と言った。
「駄目だ」と俺が言い返すと、ネイが「まぁまぁ…」と止めてくる。
「∫∞∈∉⊅⊄Ρ…」
念仏のような言葉をウズィが唱えると、ネイが固まる。
「どうしたんだ」と聞くと、「俺の国の言葉を話しやがった」とネイが言う。
また、ウズィが俺に向かって「∅∆∝∈∉∟⊃……」とつぶやく。
驚いた。
「何て言ったんだよ」ネイが聞いてくる。
俺の国の言葉だ。簡単な挨拶だが、こう言いやがった。
『これから宜しく』と…
ウズィは、ニタニタと笑っていた。
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