ポンコツ親父のガラクタ日記

ポンコツ親父の下らないガラクタ日記です。ポンコツ雑記とガラクタ小説をあげています。お時間のある方は読んでやってください。m(_ _)m

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窓から外を眺めるのが好きだ。

私が好きな言葉は「平凡」と「平和」だ。

幼少期から目立つことが嫌いな内気な子供だった。

真面目な私は中学生の時に校則に則って、おかっぱ頭にしていた。もちろん周りは守っていない古い校則だったけど……

痩せぎすで、目が細い私を河童とからかう男子が居た。 確かに河童に似ていると鏡を見て思ったが、私は傷ついた。

今までも容姿に自信がなかったけど、更に自信をなくした私は、いつも顔を見られないように窓から外を眺めるようになった……

いつも目立たず、平凡な時が流れることを望むようになっていった。

無難な道を歩み、短大を卒業して、小さな小さな会社の経理に就職した。

いつも、決まった時間のバスに乗って通勤し、家と会社を往復する毎日にいきなり現れたのが主人だ。

どこで私を見かけたのか分からないけど、いきなり現れての第一声が、「付き合ってください。」だった。

話したことも無く、容姿も良くない私に何故そんなことを言ってくるのか、意味が分からなかったが、真面目そのものの表情で言われたため、オーケーしてしまった。

基本的に無表情で、感情の起伏が全く無い。 何事もソツなくこなすけど、無駄なことはしない。

それが主人だった。

平凡で平和な生活を望み私にとって、主人との時間は居心地が良かった。

主人とは喧嘩もしないし、愚痴も言わない。会話も最低限で良いし、時間は絶対守ってくる。

あと、主人の前で困っていることを話すと解決してしまう。

困ったことに、大抵のことを解決してしまうのだ。

家の鍵を忘れた、スーツケースの鍵を無くした時などは、奇妙な道具で開けてしまう。

酔払いや、迷惑な人に絡まれても、その人達は何故か転倒してしまう。

一度、私の会社で経理員がお金を持ち逃げした時には、私がポツリと愚痴を言っただけで、次の日に縄で縛られた経理員が会社に居た。

怪しい能力と不規則な勤務時間が嫌なので、結婚するなら転職してくれと主人に言ったら、翌月には転職してくれた。

結婚してから17年、私の毎日は波風ひとつ立たない平和な毎日が続いている。

たまに家から出て、新幹線に乗ったら迷惑な乗客が居たが、主人が解決してくれたらしい。

どうしたのかと尋ねると、「これで……」とピアノ線を取り出した。

主人はそこに何が入っているか分からない、ドラえもんみたいな上着のポケットにピアノ線をしまい、無表情で座っている。

新幹線の窓からは、のどかな田園が見える。まるで私の毎日だ。

garakutablog.hateblo.jp

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